熱の3つの伝わり方(放射・伝導・対流)を分子でイメージする

熱の放射 日常にある理科

最近、熱の伝わり方を習ってきた長女。でも、よくよく考えると、自分自身がこの3つの違いを正確に理解していないような気がしました。改めて、熱の3つの伝わり方を一緒に振り返ってみました。

熱の伝わり方の曖昧な理解

熱の3つの伝わり方は、お馴染みの放射(輻射)、伝導、対流になります。この3つの熱の伝わり方の例でよく挙げられるのがこう言うもの。

放射:太陽の光に照らされて地面が温まり、それがさらに空気に伝わる

伝導:金属棒の端を温めると、徐々に熱が逆の端まで伝わる

対流:水の入った水槽の底を温めると、温まった水が上昇して水槽全体が温まる

なんとなく、「放射は気体で熱がじんわり伝わる」「伝導は金属で熱がじんわり伝わる」「対流は気体や液体が混ざることで熱が伝わる」とイメージしてたんですが、これだと、放射と伝導は熱が伝わる媒体が気体か固体かの違いで、同じように熱が伝わっているように感じます。

また、この解釈だと「放射」という言葉のイメージとずれています。

どうやら僕はこの3つの熱の伝わり方を曖昧にしか理解できていないようです。ということで、調べてみました。

熱とは、分子の運動エネルギー

高校時代の物理を思い出してみると、そもそも熱とは分子の運動エネルギーでした。温度が低い状態では分子がほとんど動いていない(個体:H2Oで言えば氷)状態だったのが、熱が加わると分子に運動エネルギーが加わり徐々に動くようになり(液体:H2Oで言えば水)、どんどん熱が加わると分子の運動エネルギーがさらに大きくなって分子が激しく動く(気体:H2Oで言えば水蒸気)になるのでした。

つまり、熱が伝わるとは、その場所にある分子の運動エネルギーが高く、つまり分子がより激しく動くようになることを意味します。

物理学の熱力学において、熱(ねつ、英: heat)は、高温の物体から低温の物体へと移動するエネルギーである

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1

では、その分子の動きはどうやって強まるのか、その様式が3種類ある、ということなんですね。

分子の動きを強くする3つの方法

では、熱が伝わる=その場所の分子の動きが強まる3つの方法を振り返ってみると・・・

熱の伝わり方と分子の動きの強まり方

  • 放射:熱源から放出された電磁波が当たって分子の動きを強める
  • 伝導:熱源の分子の動きが隣の分子に伝わる
  • 対流:熱を持った分子そのものが動く

ということだったんですね!では、一つずつ詳しくみてみましょう。

放射:電磁波が当たって分子を動かす

放射は熱源が出す電磁波が分子に当たることによって、その分子が動いて熱される、という伝熱です。では、そもそも電磁波とは?ということで、ソースを持ってきました。

環境省_電磁波の仲間

身近にある光や電波、病院のレントゲンで使われるX線なんかもまとめて電磁波と言うんですね。

なので太陽光で暖かくなるのは、太陽光という電磁波が分子に当たることによって動かされ、放射によって温められるわけです。ストーブや火に当たると温まるのは赤外線が電子レンジで食品が温められるのはマイクロ波が、それぞれ放射してものを温めているということです。

放射は「熱源から離れたものが、熱源から放たれた電磁波が当たって温められる」ということですね。

熱の放射

放射冷却:地球が熱を放射して冷える

日中は太陽からの放射で地球が温められています一方で、温められた地球も熱を放射している(赤外線を放出している)ことになります。日中は太陽から放射される熱量が地球から放射する熱量より大きいため、地球の気温が上がっていきます。一方で夜は太陽からの放射を受けなくなるため、地球から熱が放射され、気温が下がっていきます。これを放射冷却というわけです。

伝導:隣の分子同士で動きが伝わる

伝導は「熱を持っている分子の振動が隣の分子にも伝わる」というイメージ。

なので、金属棒の端を熱すると、そこから徐々に熱が広がって金属棒が温まっていき、最後に棒のもう一端が熱くなるというのが熱の伝導でよく使われる例。

しばらく温かいものを触っていると、手も熱を帯びていますが、これも熱の伝導によるもの(ヤケドに注意!)

ちなみに、伝導は分子同士が隣り合っていれば生じるので、熱の伝わりにおける重力の影響を無視できます

ということで伝導は「隣り合った分子の振動が伝わる」ことで起きる伝熱で、固体・液体・気体に関わらず、物体が隣り合っていれば生じることになります。

熱の伝導

固体以外でも伝導は生じる

こうやってみると、伝導は固体での熱のやり取りのように感じますが、必ずしもそうではありません。例えば、焼いた石を水の中に入れると一気に沸騰したりしますが、これは石から水に熱が伝導しているためです。

熱した金属の周りの空気が温かくなりますが、これも金属から接している空気に熱が伝導しているからです(金属から離れた空気が徐々に温かくなるのは、放射や対流の影響が大きいでしょう)。

ということで、伝導は隣り合った分子への熱の伝達なので、固体に限った伝熱ではない、ということですね。

対流:熱を持った分子そのものが移動する

最後の対流は、熱を持った分子そのものが移動することで生じる熱の伝わりです。分子そのものが移動しないといけないので、液体や気体での熱の伝わり方になります。

気体や液体はそもそも単純に拡散します。例えば焚き火の煙が空気中に拡散して見えなくなったり水に色水を落とすと拡散して薄い色水になったり、水に砂糖を入れてそのまま放置するとしばらくして全て溶けますが、底の方だけでなく全体的に均質な甘さになったり。このように気体や液体は濃度勾配をなくす方向に自然と動いて拡散します。この際の気体や液体の動きも熱運動によってもたらされるランダムな動きです。

対流はそのような単純な拡散ではなく、熱勾配によって生じた方向性を持った動きになります。気体や液体は温度が高い方が密度が低くなる(=単位体積あたりの重さが軽くなる)ため、温度の高い気体や液体が上昇することで、もともと上方にあった温度の低い気体や液体が下降する、という重力の影響を受けた方向性が生じます。

もちろん、熱運動の強さが重力より強く、ランダムな拡散の影響で一部の暖かい分子も下方向に動きますが、全体として上方向に動くという方向性ができるわけです。

典型的なのが、お風呂の湯沸かし問題。お風呂のお湯を沸かす時、浴槽の下方に開いた管でお湯を温め、それが上方に動くことで上方の口から浴槽に出る。すると出た分だけ浴槽から下方の口を通して管にぬるいお湯が引き込まれ、またそれが温まって上方の口から浴槽に出る。浴槽の中ではこの管へのお湯の出入りの循環に合わせた対流が生じ、全体的に温かくなる。

エアコンでの室内での空気の循環も対流で説明されますね。冷房の時は部屋の上方に冷風を流すと、自然と冷たい空気は下降し、下方の温かい空気が上昇する、という対流による循環ができます。暖房の時はその逆で、部屋の下方に温かい空気を流すことでこれが自然に上昇し、上方の冷たい空気が下降します。これで室内全体の空気を調整することができます。

ということで対流は「熱を持った分子そのものが移動する」ことで熱を伝えるため、ある程度自由に移動することができる気体と液体での伝熱になります。また、この移動では、温度による比重の違いで重力の影響を受けて温かいものは上昇し、冷たいものは下降する、という分子の動きの大まかな方向性が生じています。

2層のカフェオレ(ツートンコーヒー)

時々カフェに行くと、アイスカフェオレが2層になって出てきます(ツートンコーヒーというらしい)。これ、なんか嬉しくなりますよね。最初に牛乳と氷を入れておいて、そこからコーヒーを氷に沿わせてゆっくり静かに入れていくとできるようです。牛乳とコーヒーの比重の違いでこのようになっているわけです。

先ほど、対流の例でお風呂の追い焚きを上げましたが、追い焚きで風呂釜全体が対流のおかげでうまくあたたくなると思いきや、昔の風呂釜だと実際には暖かいお湯が上から出るせいで、大体混ぜないと上の方が熱くて下の方がヌルくなってることありますよね(笑)まるでツートンコーヒーのよう・・・。

ちなみに、子供の頃、自宅の風呂釜は追い焚きするとツートン湯になってましたが、今の自宅の風呂釜はなんと追い炊きの際に温かいお湯を下から出してくれて、対流して自然に全体が温まっています!

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